全国の「アイドル好き」「ダンス好き」の女子大学生が、本家アイドルさながらのパフォーマンスで観客を魅了する大学対抗アイドルコピーダンス・コンテスト「UNIDOL(ユニドル)」。今回はそんなユニドルの知られざる実態に迫ります。
追手門学院大学の学生を中心としたユニドルチーム「純白のアスター」から、追大生のもえさんとあきさん。そしてUNIDOL関西実行委員会の岡本 和真さん(関西学院大学)と清水 真維さん(武庫川女子大学)とともに、ユニドルの魅力から今注目のチーム、普段の活動の様子まで、彼女たちの青春に迫りました。
アイドルの進化系?ユニドルとは
「アイドル」みたいだけど「アイドル」じゃない
(編集部)ユニドルとは、どのようなものなのでしょうか?
(岡本さん)よく「大学生のアイドル」とイメージされがちなのですが、UNIDOL(ユニドル)は基本的にはイベントの名称であり、女子大学生による大学対抗アイドルコピーダンス日本一決定戦のことで、「UNIversity iDOL」に由来します。 「普通の女子大生が、一夜限りの“アイドル”としてステージに立つ」というコンセプトのもと、アイドルやダンスが好きな全国の女子大生が集まってチームを結成し、好きなアイドルの曲やダンスをコピーしてパフォーマンスの完成度の高さを競う大会です。
ユニドルの歴史
(編集部)ユニドルはいつから始まったんですか?
(清水さん)第1回大会が開催されたのは2012年。上智大学のアイドルコピーダンスサークル「SPH48」の呼びかけによって、関東を拠点とする大学の7チームが参加したのがユニドルの始まりです。ちなみに第1回大会の優勝は武蔵大学の「LolliPop」、準優勝は法政大学「Kimowota☆7」でした。 関西では2014年の夏に初めて開催され、現在では関東大会・関西大会に加え、九州大会、東海大会、そして北海道大会と全国5都市で展開しています。参加チームや観客動員数も年々増え、規模が大きくなっているんですよ。 一つの大学で構成しているチームだけでなく、追手門学院大学のように複数の大学からメンバーが集まるインカレのチームや1人で活動しているチームもあります。
(編集部)どんな学生がユニドルに参加しているんですか?
(もえさん)基本的にはアイドルが好きで、ダンスも好きな学生が多いです。ユニドルについてはあまり知らないけど、大きなステージでダンスを踊れて楽しそう、という気持ちで始める人もいるみたいです。
(あきさん)高校生の時にユニドルに憧れて、「好きなチームで活動したい」と進学先の大学を選ぶ人もいます。普通のダンスサークルと違うところは、加入当初にダンス未経験者がわりといる点かもしれません。実際、私たちが所属する「純白のアスター」も、新規加入者の半数くらいはダンス初心者です。スタートのレベルはバラバラですが、みんなで大会に向けて完成度を高めていくのが楽しくもあり、大変でもあります。
ユニドルならではの魅力に迫る
(編集部)他のアイドルにないユニドルの魅力とは何でしょうか?
(岡本さん)一般的なアイドルのステージは自分たちの曲しかパフォーマンスしませんが、ユニドルでは一つのステージで様々なアイドルグループの曲を披露します。セットリストを同じ雰囲気の曲でまとめたり、テンポのガラッと違う曲を並べたりと、選曲にそれぞれのチームの個性が出る点がおもしろいです。
また、曲と曲をつなぐ演出も学生オリジナルです。たとえば早着替えをしたり、映像を活用した演出をしたりと各チームの工夫がみられます。そういった点がユニドルならではの魅力といえますね。学生らしさという点では、大学で電子工学系の講義を履修し、電飾を施した衣装でイルミネーションの演出を打ち出したチームがありました。
(清水さん)すべて自分たちでプロデュースするからこそ、みんな熱意と工夫がすごいんですよね。アイドルの振り付けを真似て踊るだけじゃなく、衣装を作ったり舞台背景用の動画を制作したり。特技を生かして裏方として活躍しているメンバーもいれば、ユニドルの活動を通して新しい趣味や特技を見つける人も多いようです。
(あきさん)演じる側にとっては、実際に大勢の観客の前でパフォーマンスできることは、やはり特別な体験で、ユニドルの大きな魅力のひとつです。舞台でのMCなどにも取り組んで、大きく成長できたなと感じています。
(もえさん)他大学の人達と交流ができるのも魅力ですね。ユニドルのスピンオフイベントではコラボチームでの出場枠があるので、ユニドルを通して新たな出会いが増え、活動していてよかったなと思います。
ユニドルに情熱を捧ぐ学生たち
夏と冬がメイン大会。アイドルコピーダンスサークルの頂点はこうやって決まる
(編集部)大会はどのように行われているのでしょうか?
(岡本さん)メインとなるのは夏と冬の大会です。全国で地方予選が行われ、それぞれ上位1~3組のチームが決勝大会へ進出。決勝大会では12~14組のチームが優勝を目指してパフォーマンスを競います。 当初は関東圏の大学のみで参加チーム数が少なかったのですが、前回の冬大会は北海道4チーム、関東28チーム、東海17チーム、関西14チーム、九州8チームの計71チームが参加するまでになりました。イベント動員数は2万人近くで、毎回大盛況です。
メイン大会以外にも、秋には1年生や初出場チームのための大会「UNIDOL Fresh」、3月には卒業生のラストステージとなる「UNIDOL 卒業コンサート」「Spring Festival」などスピンオフイベントもあります。
(編集部)大会はどういった方法で審査されるのでしょうか?
(清水さん)アイドルプロデューサーやダンサーなどからなる審査員3~4名の評価と、観客の投票で順位が決まります。審査項目は「ダンス」「表現力」「個性」「演出」「魅了度」の5つがあり、本家のアイドルを完全にコピーするなど、ダンスの技術の高さだけでは勝つことができません。ステージの構成力や表現力、チームならではの個性を表現できるかがポイントになります。観客投票があるので、見ているお客さんにいかに感動を与えるかも大切な要素です。
ちなみにこれまでの大会では、関東以外のエリアから優勝チームが出たことがないんです。私は実行委員として関西エリアを担当しているので、どうしても関西贔屓になってしまうんですが……。関西エリアのチームは年々実力を上げてきていて、予選から大接戦が続いています。ぜひ、次の大会では関西エリアから優勝が出てほしいと思っています。
メディアでの露出も増え、注目度が高まるユニドル
(編集部)メディアで取り上げられることも増えて、世間からの注目度も高まっているようですね。
(清水さん)有名なアイドルのイベントのオープニングアクトとしてユニドルチームが出演させてもらえたり、全国ネットのテレビ番組で特集されたりとユニドルに対する注目度が高まっていると感じます。ユニドルの認知が高まるにつれて、実際にユニドルに参加してみたいという人が増え、チームも増えてきました。 私たち実行委員会はユニドルの認知度を高め、たくさんの企業さんに協力してもらうのも大切な仕事ですから、広報活動には特に力を入れています。
いま注目のチームを紹介!
(編集部)次回の夏大会に向けて、注目チームを教えて下さい。
(岡本さん)最近は全体のレベルが上がり、どのチームも個性豊かで注目したいのですが、実績や話題性からご紹介します。
■すべてがハイレベル。昨夏、完全優勝を打ち立てた筑波大学「Bombs!」
(岡本さん)事情により、現在は夏大会のみ出場するのが恒例のチームですが、出場するたび優勝候補の筆頭。5つの審査項目全てにおいてレベルが高いチームです。2022年夏の大会では、会場観客投票・オンライン投票・審査員得点すべてが1位の完全優勝を成し遂げました。
■2回の優勝経験がある関東の強豪。上智大学「SPH mellmuse」
(岡本さん)ユニドルを創設したチーム「SPH48」が前身の「SPH mellmuse」は、ユニドルを語る上で欠かせないチームです。メンバーの層が厚く、人数を活かしたダイナミックなフォーメーションや振り付けは必見。舞台構成力も非常に優れていて、ユニドルを知る人たちからは常に「さすが」と高い評価が上がります。
■引き込まれる世界観。慶應義塾大学「さよならモラトリアム」
(もえさん)大胆なだけでなく繊細な雰囲気づくりもとても上手で、ステージを見ていると世界観に思わず引き込まれてしまいます。パフォーマンスに加えて衣装へのこだわりも強く、先ほど岡本さんがお話しされていた“電飾を施した衣装”で出場したのがこちらのチームです。
■「UNIDOL 2022-2023 Winter」王者。“坂道系”を極める早稲田大学「夏目坂46」
(あきさん)清楚・気品・優雅といったキーワードがよく似合う、坂道系をメインに演じるユニドルチームです。昨年まで敗者復活戦最強チームと恐れられる存在でしたが、先日の冬大会では予選をストレートで勝ち抜き見事優勝。さらに強いチームになりました。
■昨夏の準優勝、関西の強豪チームといえばここ。同志社大学「やっぱりまかろん。」
(あきさん)ダンスのレベルが高く、表現の幅もとても広い! 様々な雰囲気の曲を踊りこなす力に定評があります。昨年の夏は他チームがなかなか手を出さないコンテンポラリーダンスの曲にチャレンジし、見事なステージを作り上げていました。関西随一の強豪で、関西エリアでは「打倒まかろん。」と頑張っているチームが多いんです。
ユニドルを観戦したい!チケットはどこで買える?
(編集部)今後の大会情報について教えて下さい。また、チケットを購入するにはどうすれば良いのでしょうか?
(岡本さん)関西予選は例年通りであれば6月に大阪のライブハウスで予選が行われます。その後、決勝は7~8月に都内某所で開催の予定です。 チケットはユニドルの公式サイトからではなく、各チームから購入するシステムになっています。SNSを通してチケット販売を告知しているチームが多く、詳細な販売方法はそれぞれ異なりますので、ぜひSNSをチェックしてみてください。 また、参加チームも受付中です。チャレンジしてみたいチームは、ユニドルの公式サイトや公式SNSを確認してください。
追手門学院大学の学生が多く所属する「純白のアスター」
ユニドルとの出会いと、「純白のアスター」にかける想い
(編集部)追手門学院大学の学生が立ち上げた純白のアスターは、「UNIDOL 2022-23 Winter」で決勝進出を果たしました。「純白のアスター」のメンバーのもえさん、あきさんは、どのようなきっかけでチームに入り、どういった思いで活動してきましたか?
(あきさん)「ダンスが好き」という思いから加入して、最初はステージに立つことが純粋に楽しかったです。でも活動を続けるうちに、「みんなでもっと上を目指したい」「観客にもっといいパフォーマンスを見せたい」という思いが出てきて、自分が後輩を指導する立場になった頃からは、いろんな人に支えられているありがたさを感じるようになりました。 前回の冬大会の決勝戦、私たちは関西からの出場なのに、東京の会場まで応援に駆けつけてくれたファンの方もいるんです。今は応援してくれる人たちに応えたいという思いが原動力になっていて、「純アス」で優勝したい、応援して下さる方々ともっと素敵な景色を見たいです。
(もえさん)私は大学でダンスサークルに入りたくて、SNSで「純白のアスター」を見つけたことがきっかけでした。当初は「ダンスもアイドルも好きだしやってみよう!」と気軽な気持ちだったんですが、大会に向けてみんなで頑張るうち、一生懸命に熱くなれる自分に気付きました。 優勝はもちろん大きな目標なんですが、ただ勝ちたいというのではなく、応援してくれる人たちに喜んでもらいたいとか、ダンス指導、衣装製作で力になってくれるOGの先輩方にも恩返しがしたいというところが大きいです。
(編集部)ご家族や友人、周りからの反応は?
(もえさん)特に両親がすごく応援してくれています。私、以前は飽き性で何をやっても続かなかったし、目標と言えるものがなかったんですが、ユニドルに出会ってから変わりました。打ち込んでいる姿を見た両親は「夢中になれるものができて良かったね」「頑張ってね」と言ってくれています。
(あきさん)私は家族や親戚、友人知人みんなに「純アスで活動している」って話しています。それまでユニドルを知らなかった人も興味を持ってくれて、会場へ応援に駆けつけてくれるんです。純アスだけでなくユニドルの舞台って本当に元気をもらえるので、もっとたくさんの人に見てほしいです。
ユニドルに出場したい人へ!「純アス」からのメッセージ
(編集部)ユニドルに興味がある、ユニドルに出てみたいな、と思っている学生にメッセージをお願いします。
(もえさん)少しでも「やってみたいな」と思ったら挑戦してみてほしいです。通っている大学にユニドルに出場するサークルがなければ、自分でチームを立ち上げるのもいい経験になると思いますし、私たちのように複数の大学からメンバーが集まるインカレチームを探してみるのもいいと思います。 ダンスを踊るのが恥ずかしいと思ったり、人前に立つのが苦手だったりする人もいるかもしれませんが、練習を重ねるうちに慣れてくるはず。ユニドルに参加できるのは大学生の間だけで、大会も限られています。少しでもやってみたいと思ったら、ぜひ行動に移してほしい!
(あきさん)私も同じ思いです。少しでも興味があったら、まずはSNSなどでチームの説明会などの情報を調べて、メッセージを送ってみることをおすすめします。ダンスが未経験でも、ミシンを触ったことがなくても大丈夫。チームの中で活躍できる分野が絶対にあるので、まずは参加してみてください。
アイドル文化を未来へつなぐ。ユニドルが掲げるビジョン
イベントを支える実行委員会の熱い思い
(編集部)ユニドルは約2万人の動員数を誇る大きなイベントになっていますが、運営も学生主体だそうですね。
(岡本さん)そうです。裏方仕事が好きだったり、ユニドルが好きで運営に携わるようになったりと動機は人それぞれですが、実行委員会はみんな熱意を持って取り組んでいます。
(編集部)岡本さん、清水さんはUNIDOL関西実行委員会にどういったきっかけや思いで取り組んでいるのですか?
(清水さん)私がユニドルの運営に携わるようになったのは、日頃は普通の学生生活を送る女子学生たちがステージ上では輝いており、その姿に惹かれたことがきっかけでした。 アイドルのことをほぼ知らないところからのスタートだったんですが、今は運営の活動に夢中です。
(岡本さん)私はもともとアイドルが好きでユニドルの存在を知り、このイベントを支えたいと実行委員になりました。実行委員それぞれに担当するチームがあって、イベントに向けた活動のフォローや連絡の窓口といったマネージャー業を担いますが、自分が担当したチームが結果を残してくれると胸にこみ上げるものがあります。また、お客様に「ありがとう」と声をかけていただくとやりがいを感じます。
目指すは世界発信。ユニドルの役割と今後のビジョン
(編集部)ユニドルが担う役割と、実行委員会の今後のビジョンを教えてください。
(清水さん)ユニドルを応援してくださるお客様は、もともとアイドルのファンという人もいれば、普段はライブハウスに滅多に行く機会のない演者の両親や親族、友人などいろいろな人がいます。ユニドルをきっかけにアイドルに興味をもつ人もいて、文化としての「アイドル」が世間に定着しつつある今、ユニドルはその文化をさらに広げる役割を担っていると思います。 またスピンオフイベントでは、普段はライバルのチームのメンバー同士が混ざって、コラボチームをつくり、好きな曲を踊ることがあります。こういったイベントを通じて大学間の交流、学生同士のコミュニケーションを盛んにすることもユニドルが持つ役割の一つだと考えています。
(岡本さん)正直なところ、コロナ禍で会場の人数制限などがあり運営側は大打撃を受けました。しかし私たちはどんなに苦しくてもイベントを継続することを諦めません。続けることで、ユニドルだけでなくアイドルの文化もずっと繋げていけると考えるからです。 ユニドル実行委員会の今後のビジョンとしては、『日本文化として「アイドル」を世界へ発信』、『アイドルを軸とした大学生の国際交流』、『日本の大学の世界的知名度向上』と3つの目標を掲げています。今は新型コロナの影響もあって難しい部分もありますが、将来的には海外展開も視野に入れて、様々な出会いや交流を作ることができるように活動していきたいと思います。
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