【前編】コロナ離婚急増!?シングルマザーの行き先は?人気の母子シェアハウスとは?

追手門学院大学 地域創造学部葛西 リサ

【前編】コロナ離婚急増!?シングルマザーの行き先は?人気の母子シェアハウスとは?
(写真:PIXTA)

母子世帯の住まいの研究を続ける地域創造学部の葛西リサ先生は、「コロナ離婚」という言葉がメディアやSNSを飛び交う中、急遽ひとり親へのアンケート調査を実施。シングルマザーたちへ降りかかるコロナの影響を明らかにしました。今回は、母子家庭が抱える問題と母子シェアハウスがテーマです。

女性を待ち受ける課題

コロナ離婚急増!?シングルマザーの行き先は?人気の母子シェアハウスとは?
(写真:PIXTA)

借りたい女性、貸せない不動産

(編集部)離婚をして家を出た女性の生活は、どのようなものなのでしょうか?

(葛西先生)厚生労働省の調査によると、シングルマザーになった女性のうち、結婚期間に働いていたのは全体の7割。そのほとんどがパート労働というデータがあります。無職あるいは非正規雇用など、就労が不安定とみなされた場合、住宅を借りる事が困難になります。家賃不払のリスクが高いというのが大きな理由です。

家を借りるのが難しい場合、「実家や親類宅に頼る」or「不安定就労でも手が届く、低家賃で低質な住居にうつる」というのが現実的な選択肢として挙げられます。育児・保育への援助の期待もあり、実家に戻る人も多いです。一方で、頼るところがない「関係の貧困」に陥る人の実態が可視化できていないのが現状です。

仕事と子どもの看病

(編集部)住宅面以外では、どういった課題に直面することが考えられますか?

(葛西先生)シングルマザーが抱える悩みの1つに、病児保育があります。高額なシッター代が払えず、結果、仕事を辞めるというケースもよく耳にします。

正社員として働くシングルマザーの中には、育児との両立が難しいという理由から、敢えて融通が利きやすいパートの仕事に転職する人もいます。また、安定した収入を求めて複数の仕事をかけもちする、いわゆるダブルワークやトリプルワークを選択する女性も少なくありません。

例えば、子どもがインフルエンザになった場合には、看病のために長期間にわたって欠勤が続くわけです。こうしたシングルマザーの中には、会社に居づらくなり、退職を選択したという人もありました。

コロナ感染への不安

(編集部)先生が行った新型コロナに関するひとり親アンケート調査では、どのような声が挙がっていますか?

(葛西先生) 不安定な就労形態の方が多いので、仕事を失ったという声がたくさん挙がっています。収入が「減った」だけではなく「無くなった」という声も多く挙がっていました。

シングルマザーのほとんどは潤沢な貯蓄がなく、切り詰めて家計を支えています。母子ともに生活していくためには働きに出ざるを得ませんが、一歩外に出るとコロナウイルスの感染リスクが高まります。居住空間は狭く、自分が感染すれば家族にも感染が広がるリスクも高いため、「もし自分が感染してしまったら家族もろとも死ぬしかない」という声や「死ぬかもしれない」、「死にたい」といった声がとても多く衝撃的でした。

母子シェアハウスの試み

母子シェアハウスの試み
ペアレンティングホーム金沢文庫(母子シェアハウスの一例)

シェアハウスという暮らし方

(編集部)母子家庭向けのシェアハウスとは、どのような物件なのでしょうか?

(葛西先生)登場したのは2008年頃。空き家が増加したこと、子どもの貧困に注目が集まるようになったことが背景にあります。シングルマザーは昔から家賃不払いのリスクがあると見られ、不動産サービスから排除されてきました。このような層をどう受け入れていくかを考える中で試験的に開始されたのが、母子シェアハウスです。

以前メディアで大きく取り上げられた「ペアレンティングホーム」は「明るく楽しくワイワイ生活する」というコンセプトで人気が高まり、母子シェアハウスが全国に広がりました。

通常、ひとり親だけの生活だと、孤食あるいは母子だけの寂しい食卓ですが、シェアハウスでは、大勢でご飯を食べるという楽しみがあります。さらに、同じシェアハウスに住む年長の子どもが年少の子どもの面倒を見てくれることもあり、育児の負担が減り、お母さんの自由時間も増えるなど多くの魅力があります。

母子シェアハウスを選んでもらうための工夫

(編集部)母子シェアハウスはどんな工夫をして課題に向き合っているのでしょうか?

(葛西先生)母子シェアハウスを選ぶのは無職・貯蓄なしなど、経済的に行き詰まっている方も多くおられます。貸す側は、そういったひとり親の実情を受けて、なんとか入居させてあげられないかと、家賃不払のリスクをクリアにする方法を考えています。

母子シェアハウスを選んだ方の事例として、例えば、貯金がある場合、まず3カ月契約で家賃を前金で払い、3カ月後に仕事が決まっていたら長期で契約するという事例もあります。契約時点で仕事も貯金もない場合は、家とセットで仕事の斡旋をするパターンや、シェアハウスの中に働くスペースを作り、家賃分の仕事をしてもらうという仕組みをとっているシェアハウスもありますね。

住まい以外のサービスを通して、離婚直後の生活を早急に立て直す後押しをすることで、シェアハウスを選んでもらおうという工夫が施されています。

まとめ

離婚後、生活のために女手一つで育児・仕事をこなすシングルマザーの方々が直面する、住宅を借りる上での問題、急な長期にわたる子どもの看病など、様々な負担がひとり親にのしかかることが分かりました。さらに、コロナの影響で不安は日々大きくなっています。これらシングルマザーの負担を軽減できる、母子シェアハウスという選択のメリットについても理解することができました。では、具体的にコロナ収束に向けて住まいの形はどうあるべきなのでしょうか。そして、シングルマザーに必要な支援とはどのようなものでしょうか。

次回、後編では、アフターコロナの住まいの形や母子家庭への支援について、引き続き葛西先生に話を伺います。

後編の記事はこちら

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プロフィール

葛西 リサ

葛西 リサ (くずにし りさ) 追手門学院大学 地域創造学部 地域創造学科 准教授 学術博士専門:住宅政策、居住福祉

2007年 神戸大学自然科学研究科博士課程修了
2020年~ 追手門学院大学 地域創造学部 地域創造学科 准教授
主な著書に『母子家庭の居住貧困』(2017)等 多数

研究略歴・著書・論文等詳しくはこちら

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